見た目イケメン、中身キモメン
彼が来るまで暇になってきたので、スマフォの電源を入れる。
「わー、40件」
不在着信の件数だ。こんなにあるなんて、初めて見た。凄い。
履歴を見れば、大学の友人関係。ツイッターを見た人ばかり。
ラインも多く来ていた。
大概は『少しぐらい』と、お金の話。
虚しい思いに駆られる最中、ふと、お金の話ではないものが混じっていた。
『ちょっと、あんた大丈夫ー?みんなして、あんた探せって躍起なってる』
友達の一人だ。心配してくれているんだと嬉しい反面、悪い気持ちになる。
私がバカな真似をしてしまったせいで、心配かけさせてしまった。彼女だけにもラインを返そう。
『大丈夫だよ。今、彼氏さんと一緒で、A市の大型スーパーの地下駐車場にいるんだー。心配かけさせて、ごめんね』
送信、と。
これで彼女も安心してくれると、胸を撫で下ろせば、着信。知らない番号だった。
「も、もしもし」
『橋本っ!やっと繋がった!マジでさぁ、五万ぐらい』
上田くんだった。
あれ、でも、上田くんの番号登録しているのに、何故だか知らない番号になっている!
ディスプレイを見直せば、件名なく番号だけ。首を傾げて返事を疎かにしている内に、苛立ち気な声が聞こえて来た。
『おい、聞いてんのかよ!三億円当てたんなら、五万ぐらい良いじゃねえかよ!心せめーな、てめえ。ちっ、マジでムカついた。女だろうが、容赦しねえし。待ってろ、そっち行くからさぁ!』
身も竦む怒声に、たまらず通話を止め、電源を落とす。沈黙したスマフォ。耳鳴りがするほど無音の車内。
それでも。
「くら、いし……さん」
耳に根付く怖さを、彼にかき消してもらいたくなる。
喋れない倉石さんに言ってはいけないこと。私のせいで困らせちゃダメなのに。
「倉石さん……」
一人が、こんなに辛いなんて、あなたがいなければ分からなかったのに。