見た目イケメン、中身キモメン

ーー過程、上田くんと目があった。

「なっ……」

何でここに!

出した頭を引っ込めて、息を殺しても遅い。

車のドアを叩かれた。
次にガチャガチャと鍵のかかったドアを無理に開けようとする音。

「開けろって、橋本。ケチくせえてめえにーーこれ見よがしに自慢するてめえに、社会ってもんを教えてやんよ。あんま、調子乗るなよ?」

耳を塞いでも聞こえる声。
鼓動が太鼓となって、ドアの叩く音と連動するようだった。

「ちっ、なあ、出て来ねーんなら。ガラスぶち壊すぞ?いいよな、三億円あんだから!車の一つや二つ壊したところで、問題ないもんなぁ!」

「ま、待って!」

それだけは、ダメだ。
倉石さんの車なのに、彼に迷惑がかかってしまう。

「ご、ごめん、上田くん!わ、私、自慢とか、そんなつもり、なくてっーーきゃ!」

車から出る。
出るなり、押さえつけられた。

背中に車。前には上田くん。
彼の腕が上がる。殴られると目を瞑れば、痛みはなし。ただ、耳元で大きな音がした。

「黙って金出せ。犯すぞ」

車につかれた手に力が籠もっていくのが分かる。足の間に、彼の膝が入ってきた。

「や、やめて!う、上田くん!」

「うるせーよ。痛くされたくなきゃ、じっとしとけ。ははっ、やる気になっちまった。彼氏持ちに手ぇ出すとめんどくせえと思ったが、金持ちのてめえ孕ませれば、俺にも貰う権利あるよなぁ」

「いやっ、離して!」

「びーびー騒ぐんじゃねえ!宝くじ三億円当選したことを、公(ネット)で呟いたてめえが悪いんだよ!大人しくしていればーー」

と、上田くんの声が途切れた。
見たのは、こめかみあたりに手を置いて、「な、なんだ、これ」と黒っぽい物を持つ上田くん。

私も何かと見ている内に、

「触れるなああああぁ!」

地鳴りのような怒声が聞こえた。

< 19 / 26 >

この作品をシェア

pagetop