見た目イケメン、中身キモメン
「触れるなああああぁ!」
声帯がはちきれんばかりに叫び、足はバネのように弾け飛ぶ。
なりふり構わず、後のことなんか考えない渾身の一撃は飛び蹴り。
吹っ飛んだ男と共に自滅する。不時着の痛みで悶絶してもいいが、それどころではないバナナ!彼女食べかけの!
神の奇跡か、バナナは俺の手元にあった。
三秒ルールが適用されるならば、男が触ったことはノーカウントだろう。三秒以内に飛び蹴りしたから。躊躇わずに、酸化防止のため真空パックに収納したところで。
「倉石さあああん!」
未だに座り込む俺に、彼女が後ろから抱きついてきた。
痛む体への抱きつきは、脳髄から背骨まで雷が通過するような錯覚を与えるが、背中の『ボヨン』が相殺してくれた。
背中で泣かれている。
彼女と向き合った。
思わず、抱きしめた。
強く強く、抱きしめたんだ。