見た目イケメン、中身キモメン

ーー

倉石さんの体温が、震えを取り払ってくれる。

上田くんに飛び蹴りした後、大きな音を立てて地に落ちたから、大丈夫かと心配で来たのに、言葉が出ない。全て涙に変換される。

謝ることも出来ない。赤子に退化。言葉を忘れた。

救いようがない馬鹿を救ってくれる優しい人は、どんな場面でも神様のように接してくれる。

抱きしめられた後、涙を拭かれた。
きっと酷い顔になっているのに、彼はそれでも、良かったと笑ってくれる。

怪我はないかと、逆に心配された。
ぺたぺたと体を触られる。痛む箇所はないかと、入念に触られた。

「わ、私は、大丈夫、です、か……ら」

倉石さんこそ、と打ちつけたであろう彼の体を労ってみせる。

平気だと、一人で立つ彼。私に手を差しのばしてくれた。

相変わらずの無言。
でも、さっき。

「倉石さん、病気治ったんですね」

「……」

「さっき、触れるなって。う、上田くんが私のこと触ったから。わ、私は、倉石さんの恋人ですから、安心して下さい!」

身も心も倉石さんのもの、とは流石に恥ずかしくて言えないけど。証明に抱き付いてみせる。

ややあって、彼の腕が私の背中に回った。

「好きです、倉石さん」

分かりきったことを口にする。

ずっとずっと変わらない想いを彼の中に残したいがため。

欲を言えば、彼にも口にしてほしいのだけど。

「……」

変わらずの無言。
それでも、彼は行動で愛情表現をしてくれる人なんだ。



< 22 / 26 >

この作品をシェア

pagetop