めんどくさがりの南くん
ちぐはぐの靴下
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ここは、Y大学文学部、国文学専攻の共同研究室。
あたし―――橘あさみ29歳は、研究室に隣接している助教室で探しものの最中である。
去年の三月に博士論文を提出して三年間の博士課程を修了したあたしは、運よくその年のうちに助教の席をゲットした。
ポスドク(ポスト・ドクター=博士課程を修了した後、まだ常勤の職を得ていない研究員)の就職難が社会問題として騒がれている今、ドクターを出てすぐに助教になれた私はかなりラッキーだ。
助教っていうのは、少し前までは「助手」と呼ばれていた立場のこと。
研究室運営上の事務的な仕事や、助教室に保管してある貴重な図書や資料の管理、学生の研究や論文のちょっとした指導、教授たちの研究に必要な文献集めなど、仕事はたくさんある。
以来1年間、あたしは日々、自分の研究もそっちのけで(は本当はダメなんだけど……)、学生たちの世話と教授たちから頼まれる雑用に勤しんでいた。
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