可愛い年下男子
「……あまり落ち込むなよ」


少し考えてから、坂井はそう言って私の頭を優しく撫でた。


多分……

いや、確実にコイツにはバレている。


別に落ち込んでいるつもりもない。

私自身、元彼の事は吹っ切ったと思っている。

だけど、こんな風に酔うって事は、まだ心のどこかで、完全に吹っ切れていないんだと思う。

現に、ふと寂しくなる時もあるから。

坂井はそんな私に気付いたんだと思う。


「優しくするな」


人恋しい私は、そんな風に優しくされると泣きそうになるから。


「文句言わず飲め」


仕事中は厳しく怖い坂井だけど、普段の坂井は優しい男。

まぁ、自己中な所はあるけど。

でも、そんな同期の優しさを嬉しく思った事は、絶対に言わないけど。


その後は、私が珍しく酔っている事には触れず、飲みながら、仕事の話などをしていた。


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