「私は貴方のモノ」【完結】
疲れてしまったのか、俺の腕の中でタエは眠っていた。
さらりと髪の毛が頬に落ちる。
それを取って、後ろへと流した。
無防備な姿。
タエの身体をぎゅっと抱き締めると、俺も瞼を閉じた。
タエの体温が俺を妙に安心させた。
だけど、どこかに行ってしまうんじゃないか。
そんな考えも一緒に襲って来て、中々寝付けなかった。
やっと眠りに就いてすぐ。
ガサゴソと何か音がしてまた意識が戻って来る。
ふっとタエの温かな体温が消えて、俺は咄嗟に腕を伸ばした。
ぐいっと引っ張れば、抵抗もなくタエは俺の隣に舞い戻った。
驚いた顔で俺を見つめる。
「…どこに行く?お前は俺の隣にいればいい」
部屋から出て行こうとしたわけじゃないぐらいわかってる。
だけど、口約束なんてのは信じられない。
「タエ、もう大学にも行くな。お前はここにずっといろ」
「…え」
家にいて、誰とも会わずに過ごす。
俺の事しか考えられない様にすれば、タエは俺だけを見るしかなくなる。