「私は貴方のモノ」【完結】


くそ。
抱きてえ。けど、休学届出さねえと。


仕方ないからキスで我慢するわ。


「…行ってくるわ」



靴を履くと、再度タエにキスをする。
なに。何でそんな寂しそうな顔するわけ。



早く帰って来るから。
なるべくタエを一人にしないから。


それから俺は大学に向かうと、真っ直ぐに事務へと行く。
代理としてタエの休学の手続きをした。


結構、あっさりと終わってどこか拍子抜けだったけど。



誰にも会いたくなかったのに、俺は大学を出る時一番会いたくないヤツに出逢ってしまった。



「彬さん!」



――――陽子だ。




俺は冷めた目で陽子を見る。
呼び掛けに答える事なく、ふいっと顔を背けると歩き出した。



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