「私は貴方のモノ」【完結】
「……彬さん」
それは、陽子だった。
俺をキッと睨みつけている。
「……」
「あそこ引っ越したの?」
「だから?」
「あんたのやってる事って、犯罪だよ」
「ふうん。別に好きにすれば?そしたら俺も何するかわかんねえけど」
「っ、最低」
「そりゃどうも」
ぎりっと奥歯を噛み締める陽子を、冷めた目で見つめる。
手を振り解くと俺は食堂を出て行く。
梓の呼ぶ声がするけど、無視して車へと向かった。
苛立ちが止まらない。
そんな苛立つ俺を更に苛立たせたのは。
「やっと見付けた」
―――――あの日、タエと一緒にいた男が立っていたからだ。
タエが笑顔を向けていた男。
タエの好きな男。
大学まで来て、タエを探してたって事か?
そりゃご苦労なこった。