「私は貴方のモノ」【完結】
「多恵をどこにやったんだよ」
「何の話?」
そう言うと、その男の顔が歪んで行く。
「多恵の親がいきなりいなくなったのも、お前が原因なのか?」
こいつはタエの両親の事、知ってるのか。
顔馴染みって事か。
「電話も繋がらないし、住んでるとこもわかんねえし。
大学も休学してるって聞いて、知ってるならお前しかいねえって思った」
「さあ?」
「多恵を出せよ。俺には多恵が必要なんだよ」
「……」
必要?
それはどういう意味で?
お前はタエが好きなのか?
そう尋ねようと、口を開きかけた時だ。
「葵さん!」
後ろから陽子の声が響く。
……葵さん?
この男の事か?
「陽子、ちゃん?」
葵と呼ばれた男は目を真ん丸にして、陽子を見ている。
めんどくせえ。