「私は貴方のモノ」【完結】
『もしもしっ!』
「……陽子か」
『これから家に向かおうと思ってるんだけど!』
「来る必要はない」
『どういう事?』
「タエに会わせるつもりはないが、ちゃんと話す」
『……っ、わかった。どこ行けばいい?』
「いや、今言う。俺はタエを好きだ」
『はっ?』
陽子は俺の言葉に相当驚いたようで、その後の言葉が続かない。
「だから、タエを手放す気はない」
『…ちょ、ちょっと待ってよ。
それって多恵の気持ちは無視って事?』
「そうだ」
『何それ!多恵は人形じゃない!!』
「わかってる」
『わかってないじゃない!』
「とにかく、そういう事だ。
タエもそれを受け入れてる」
『え!?待って!彬さん!』
一方的に通話を終わらせると、ハンドルに腕を置いてそこに顔を埋めた。
何度も震える携帯を無視して。