「私は貴方のモノ」【完結】
「……」
暫くそのままでいた俺は、車から出て部屋に戻る事にした。
もしかしたら陽子が来るかもしれない。
エレベーターの扉を開けると、微かに誰かの声がした。
それは男の声で。
……葵の、声だった。
「…俺、お前がいないと……」
「…お前、何してんの?」
扉に手をあてながら座り込む男に、俺は冷たく言い放つ。
タエは扉の前にいるのだろうか。
そいつは立ち上がると俺と対峙した。
「多恵を解放しろよ」
「…しつこい。俺のモノだって何度言えばわかる?」
「多恵は人間なんだよ!
多恵には自由があるはずなんだ!
その権利をお前が奪っていいわけがない!!」
人間?わかってるよ。それは。
ペットだなんて、今も思っちゃいない。
自由を奪っちゃいけないのだってわかってる。
わかってるけど、タエはそうしないと俺の側からいなくなるから。
「…昨日、あれで懲りてないわけ?」
「本当にさいっていだよ。
…女の子にあんな真似」
ギリギリと奥歯を噛み締めて、こっちを睨み付けるそいつに鼻で軽く笑うと口を開く。
「お前も同じ様にしてやろうか」
そう言うと、俺はそいつの首元に手をかける。
そいつの呻き声が漏れた。