「私は貴方のモノ」【完結】
ふらっと倒れそうになった体は、壁にぶつかって止まる。
心配そうにその男の顔を覗き込むタエを見て、笑みすら零れた。
結局、俺がどれだけ閉じ込めようともがいても好きな男の前だと意味を成さない。
少しだけ落ち着いたその男からやっと俺に視線を移す。
不安そうに俺を見つめるタエ。
はは。いつもタエは俺を見る時、そうだ。
心配そうで窺う様に見て来る。
「…そうやって、タエは結局他の男のとこへ行くんだな」
「え?」
そんな驚いた声を出すなよ。
タエはそいつが好きなんだろ?
だけどさ。
「お前は、俺の、モノ…だろ?」
そう、思いたかったんだよ。
ゆっくりと伸ばした俺の腕を取ると、その手を自分の頬へとタエは持っていく。
そして。
「…私は、アキラのモノだよ」
「………」
「ずっと、ずっと。アキラのモノ」
「………」
そうやって、タエは嘘を吐くんだな。
俺を安心させようと、それだけの為に。