「私は貴方のモノ」【完結】
そこに。
ヒールの音がしたと思ったら、
「多恵!!!」
と、大きな陽子の声が廊下に響いた。
陽子は真っ直ぐにタエの元へ近寄ると、その体をぎゅうっと抱き締める。
すぐにそれを引き剥がすと、俺はタエを隠す様に前に立った。
「…タエに触るな」
「はあ!?多恵は私の友達だっつうの!!」
「関係ない。男でも女でも」
「…まじでさいってい男だね、あんたは!!
いい加減解放しなさいよ!!」
「うるさい」
「多恵!そんな男から離れな!」
「タエは誰にも渡さない」
「…っ、あんたのしてるのは…身勝手な押し付けよ!
好きだからって何してもいいと思ってるの!?」
「……お前には関係ない」
さっきも、言った。
俺はタエを手放すつもりなんてない。
俺に洗脳されていて、タエがそう思い込んでいたとしても。
「…好きなら、どうして、多恵の幸せを考えてあげないんだ」
そう言った、この男に渡す気なんてないんだ。