「私は貴方のモノ」【完結】
「……だってさ。
彬さん…多恵は…簡単に離れて行く様な子じゃないよ。
裏切る様な子でもない。
それは私が保障する」
葵も同じ様に話す。
「俺もそれは保障する。
多恵は大切な人を大事に出来る子だから。
一番近くで…見て来たから」
……もう、タエに黙ってる事なんて出来ないな。
観念した俺は、ずっと心に秘めていた事を口にした。
「…タエが俺から離れて行くのが、怖い。
どうせ、離れて行くのなら。
…閉じ込めたかったんだ」
そう、タエを。
閉じ込めれば俺以外見なかったから。
「……あ、きら」
そう、俺の名前を呼ぶタエの声は震えていた。
静かにタエの方に体を向けると、ふっと自嘲する。
「…俺だけを見て、俺だけを頼って貰いたかった。
わかってんだよ、タエは俺の前では一切笑わなかったから。
いつも、泣きそうな顔をしてた」
それは今もだ。
タエはいつだって泣きそうだ。
葵の前で見せたあんなに嬉しそうな笑顔を、見た事がない。
泣くな。
泣くなよ。
笑ってくれよ。