「私は貴方のモノ」【完結】
キスをしただけなのに。
どうして、こんな感情にさせるんだ。
手放したくない、そう強く思ってしまう。
タエの苦しむ顔が見たい。
そう、思ってただけで。
ぐちゃぐちゃになったタエを組み敷いて、欲望のままに壊したかっただけなのに。
大人しく俺の腕の中にいるタエから、少しだけ距離を空けると一度その頬を撫でた。
本当に、このまま離れたくなくなる。
梓、うるせえから。
色々めんどくせえし。
……それに、帰ったらまた抱けばいい。
俺を見上げるタエに、口角が上がった。
中途半端だったシャツのボタンを全て留めると、ジャケットを羽織る。
それから、財布を取り出すと一万円札を出した。
「メニューはそこの引き出し」
俺の後を付いて来たタエに、指差し教えるとタエはこくこくと頷く。