「私は貴方のモノ」【完結】



「多分、帰るの…朝だから。
だから、適当に風呂入って寝てて。
そんで、これで出前でも頼んで」



俺がお金を渡すと、少し遠慮がちに受け取ってまた頷いた。



「んじゃ」


手を振る事もなく、笑う事もなく。
ただ俺の顔を見てるだけのタエにそう告げると、家を後にした。



鍵を閉めて、エレベーターに乗り込むと携帯を確認する。
うざったいぐらいの、梓からの着信。


そりゃそうだ。
俺が行くと言った時間より、大幅に遅れている。



「……だりぃ」



思わず、心の声が漏れた。


はあ、と溜め息をつきながら俺は車に乗り込んでクラブへと向かう。
運転しながら、梓へと電話をかけた。


『もしもし!?アキラ!?おっそい!』

「……悪い。今家出た」

『嘘でしょ。もう!待ってるんだからね!』

「……はいはい」

『もう~~』

「運転中だから、また」

『え?ちょっ、アキ…』


まだ何か言いかけてる梓を無視して、通話を終わらせた。
< 54 / 219 >

この作品をシェア

pagetop