「私は貴方のモノ」【完結】
「多分、帰るの…朝だから。
だから、適当に風呂入って寝てて。
そんで、これで出前でも頼んで」
俺がお金を渡すと、少し遠慮がちに受け取ってまた頷いた。
「んじゃ」
手を振る事もなく、笑う事もなく。
ただ俺の顔を見てるだけのタエにそう告げると、家を後にした。
鍵を閉めて、エレベーターに乗り込むと携帯を確認する。
うざったいぐらいの、梓からの着信。
そりゃそうだ。
俺が行くと言った時間より、大幅に遅れている。
「……だりぃ」
思わず、心の声が漏れた。
はあ、と溜め息をつきながら俺は車に乗り込んでクラブへと向かう。
運転しながら、梓へと電話をかけた。
『もしもし!?アキラ!?おっそい!』
「……悪い。今家出た」
『嘘でしょ。もう!待ってるんだからね!』
「……はいはい」
『もう~~』
「運転中だから、また」
『え?ちょっ、アキ…』
まだ何か言いかけてる梓を無視して、通話を終わらせた。