「私は貴方のモノ」【完結】
「おおっ、あっきらじゃん!」
静かにお酒に口をつけていると、音楽に負けないほどどでかい声を出して俺の元へとやって来るソイツ。
三本木。
タエの父親を借金地獄へと突き落とした張本人。
ライブ会場にいるだけかと思ってたが。
まさか、このクラブにも来るとは。
「久しぶりっ」
両隣りに女の子を連れている三本木は、女達から離れると俺の隣に座る。
「……」
「何だよ~。久々なのに冷たいな。そういえば、お前に紹介してもらったオッサン。
耳揃えて返して来たんだよな。
どこにあったんだろうか、そんなお金」
そう言うと、三本木は俺の顔を覗き込みニヤリと笑う。
「何したんだ?」
きっと、俺が何かをしたんだとこいつは勘付いている。
ちらっと一度、三本木を見た。
「別に何も」
そう言うと、俺は視線を逸らしてグラスに口をつける。
「ふうん。噂ではお前が女を買ったって話だけどな」