「私は貴方のモノ」【完結】

「彬さんですよね」

「……そうだけど」

「前からカッコいいなって思ってたんです」

「ふうん、それはどうも」

「話せて嬉しい」

「……」


ニッコリと微笑むその女は、名前を名乗ったけど。
よく聞き取れなかったから、そのまんまにしておいた。


別に知りたいわけでもないし。


「私も貰っていいですか?」


そう言いながら、グラスにお酒を注ぐと手に持つ。


「カンパイ」

「……」


チンと、少しだけ合わせた。
それから、女はくいっとお酒を口にする。


お酒を飲んでからのその女は饒舌だった。
様々な事を話して来る。


俺はそれをああ、そう、とか軽い相槌で返す。
だけども、止まる事はない。


めんどくさ。


すると、その女はスッと俺と距離を詰める。


それから、手の平を太ももに乗せた。
ゆっくりと太ももの上を移動するその、手の平。


細長い指に、綺麗なネイル。
シンプルなシルバーリング。


胸元を主張する様な、ワンピース。
緩やかなウェーブがかかったロングヘア。


誘惑する様な、その瞳。



全てがタエと違う。
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