シークレットキス
「ちょっと、やめてください」
「やだ。やめてあげない」
言葉とともに距離を近付けて、数センチと迫った彼の顔。
「っ……!」
ドクッとはねた心と驚きに、つい咄嗟に手元の書類をその顔へバシッ!と押し付けた。
「ぶふっ!」
予想より勢いよく叩いてしまった顔に、さすがに痛かったのか、いつもへらへらとしている社長も痛そうに手で顔を抑える。
「いっ~……」
「あっ、すみません、つい……」
「あ、まずい。コンタクトズレたかも……超目痛い、」
コンタクト?さすがにそれはまずいかも……。驚いたからってつい、力を込めすぎてしまったかもしれない。
そう顔の様子を伺おうと、背の高い彼の顔を下から覗き込む。
「大丈夫ですか?見せてください」
「……うん、大丈夫……嘘だから」
「え?」
あれ、そういえば社長はコンタクトなんてしていなかった気が……。
そのことに気付いた瞬間、顔を抑えていた手はドンッと私の後ろの壁に手をつき、先程より勢いよく顔を近付けた。
驚く間も逃げる隙も与えられず、触れるお互いの唇。