我が家のルール
「……ごめん。やり過ぎた」
水洗レバーを上げ、じゃぶじゃぶ水を流しながらシンクを掃除する。
彼は何も言わずにダイニングから出て、リビング奥の寝室へ入ったのが音でわかった。
どうしよう……。
とにかく気まずい。
余計なことを考えて再び気持ちが爆発しないよう、結局誰も食べなかった夕飯の後片付けに集中する。
大皿の甘酢あん掛けは前述の通り。
割れた皿はお湯で流して紙袋に包んだ。
炊飯器の中のご飯を小分けにラップして急速冷凍室へ。
冷めたわかめスープは冷蔵庫のレタスをちぎっただけのサラダの横に、鍋ごと押し込んだ。
明日のゴミ出しの準備をして、最後に手を洗い、ハンドクリームを塗って。
ああ、彼のいる寝室に行きたくないな。
付き合っている頃はケンカしたって別々の家で頭を冷やせたけれど、結婚して一緒に住んでいるとそれが難しい。
「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
あの時は自信満々に誓ったのに、一年も経たないうちに自信がなくなってしまった。