我が家のルール
バサッ トットットッ ガラッ
後ろから速いリズムで音が聞こえ、驚いて振り返った。
明らかに不機嫌な顔をした彼が、グングン私の方に向かって足を進めてきている。
私はリビングのL字ソファーに腰を下ろそうとしていたのだが、あまりの剣幕に思わずブランケットを手放し後ずさる。
しかし、カウチ部分に足を取られ、後退することはできないままソファーへ尻もちをついてしまった。
ボン、と体が弾んだと思ったら、彼がすごい勢いで正面に迫ってくる。
彼の右手が上がったから、ああ、私このまま殴られるんだと思って、ギュッと目を瞑り、体を縮こまらせた。
ドン
左耳のそばで、音がした。
体に痛みはない。
殴られたわけではないらしい。
ゆっくり目を開け顔を上げると、左頬に彼の腕が触れた。
どうやら彼の右手は私の背後の壁に突き立てられているようだ。
私の目の前には、真剣な夫の顔。