跡にも咲にも




いつもと変わらない、これが三木家の朝の様子。


廉くんは基本無口だから必要以上にしゃべらない。


でも私の問いかけにはちゃんと答えてくれるから満足。



料理は好きで毎日凝ったものを作るけど廉くんの反応は特にない。


一緒にテレビを見ていても無表情。


スキンシップはたまにあるけど乱れた様子はない。



それが廉くん。


だからそれが嫌だともつらいとも思ったことはない。


私はそんな廉くんが好きで結婚したんだから。



何も言わず黙々と私が作ったフレンチトーストを食べる廉くんを向かいの席に座って見つめる。



すると廉くんは迷惑そうに私を見た。



「…穴が開くからやめろ」


「だって今日もカッコいいんだもん」



そういうともう慣れたのか「またか」という顔をして再びフレンチトーストを食べ始めた。



私が作ったフレンチトーストが廉くんのエネルギーになる。


これほど幸せなことはない。


それだけで私は毎日頑張れる。


専業主婦だけど。



ブラックコーヒーを飲み干すと、廉くんは「ごちそうさま」とささやいて洗面所に向かった。


私はその間に使った食器を食洗機に入れる。


専業主婦だから全然洗い物をするのだか、廉くんと住んでいるこの高級マンションには備え付けだからどうせなら使ってやろうと思って使っている。
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