跡にも咲にも
そして急いで玄関に向かい、今日のネイビーに合うブラウンの革靴を出す。
くるくる回し見て汚れがないか確認する。
よし、今日もピカピカ。
そうしているうちに準備を終え、かばんを持った廉くんが玄関にやってきた。
私は靴ベラを差し出す。
廉くんは無言で受け取りさっと靴を履くと靴ベラを私に渡した。
「いってらっしゃい」
「…ん」
それが彼なりの「行ってきます」。
私はにっこり笑って玄関から出ていく彼を見送った。