跡にも咲にも
『え…?』
『ここ、男子トイレです』
『う、嘘…!』
私は慌てて外に出た。
目に映るのは青い人間マーク。
スカートは履いていないようだ。
『ご、ごめんなさーい!!』
これが初めて出会った時のこと。
それから半年後、運命の出会いのように再会した。
女性雑誌の編集部で働いていた私は同僚の菜桜子に誘われて合コンに来ていた。
と、言うか半ば強制的に参加させられていた。
『菜桜子、もう帰ろうよ』
立ち飲みスタイルで十数人が楽しく談笑するものだった。
これまで彼氏がいた記憶はなく、男性と交流するのもそんなに得意じゃなかった。
なのに、菜桜子に「そろそろ彼氏の一人や二人作れ」と言われてやってきたものの、
居心地は悪いし、なれないヒールで立っているのもつらいし、なんか気持ち悪いしでもう帰りたかった。
しかし菜桜子はテンションあげあげで私の話は聞いていない。