仔犬男子の反乱
「そうなの? 気づかなかったわ。でも、約束なんてしてないじゃない」
「しましたよぉ。夕べ、LINEでオッケーの返事をくれたじゃないですか」
「そうだった?」
うんうん、と激しく頭を上下に振る。
そして、私の顔をおあずけを食らった犬の如く見つめた。
そういえば、そんなスタンプを送ったような気がしなくもないけれど……。
他の友達とも同時進行で返信していたから、間違えて送ってしまったのかもしれない。
「ごめんね」
「明日は一緒に食べてくださいよ?」
「明日は……別の人と約束してるから」
「それじゃ、明後日は?」
「明後日は、また別の人」
むぅと口を尖らせていじける。
そんな顔が可愛くないといったら嘘になる。
でも、何度もいうようように可愛い男はお呼びでない。
所詮は恋愛対象外の仔犬男子なのだ。
ささっと食事を済ませ、「仕事に戻らなきゃ」と拓海くんのそばをすり抜けた。