仔犬男子の反乱
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「いいじゃん、付き合ってよ。どうせ一人なんでしょ?」
「急いでますので」
「ほんの5分、10分いいじゃん」
「困ります」
掴まれた腕を振り解く。
仕事のあと飲んだ帰り道、ツイていないことに明美と別れてすぐに妙な男に絡まれたのだ。
酔っ払いが行き交う、夜も更けた飲み屋街。
足早に通り過ぎようとしていた私の腕を、一人の男が強引に呼び止めたのだった。
「夜はまだ長いんだから、一緒に楽しもうよ」
「本当に急いでますから」
あまり刺激しないように丁重に断っていると、それをまんざらでもないと勘違いした男はしつこく食い下がった。
「ちょっとくらいいいじゃん」