名前を呼べない。
フロアーに入って、まずお手洗いに直行する。

女性社員は皆、席に着く前に必ずお手洗いに寄る。

そして、身嗜みを整える。

私も軽く身嗜みを整えてスマホのチェック。

学生時代の友人からラインンがきていたので
本文をチェックし返信。

スマホの電源を切る前にプライベートの予定確認…
と思ったのだが視線を感じて、すぐ電源を落とし
バッグへしまう。

視線の相手は確認せずとも分かる。

周りにいた同期や後輩たちがバタバタと荷物を片し
お手洗いを後にしている。

これは間違いなく、フロアーで最年長であり
我が係のお局様だ。

鏡越しに"たった今気付きました"感を出し

「あっ、古川さん。おはようございます」

と挨拶をした後、朝からニッコリと微笑む。

そうすると、お局様も
「おはよう」と笑顔で返してくれる。

お局様は多少抜けている人懐っこいキャラが
お好みらしいと分かってからはこのキャラでいる。

お陰で今のところ、衝突はない。





お手洗いを後にし、一息ついてフロアーへ向かう。

「おはようございます。おはようございます…」と
繰り返しながら会釈をし、自席へ向かう。

この時、上席にはなるべく視線を合わせるようにして
挨拶をし軽く微笑む。

それだけで、かなり相手に好印象を与えられる。

実際、私の上司へ私のことを引き抜きたいという声が掛かったらしい。

女は愛嬌だとか昔の話だと言う人もいるけれど
一番手っ取り早く自分の評価を上げる手段として私は最適だと思う。

確かに朝から清楚に微笑むなんて、低血圧の私には苦痛だけれども…

この少しの苦労で簡単に評価が上がるなら有難いし、お手軽だとも思う。





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