俺は今、見知らぬ女に壁ドンされている
「ちょっと、そこの男……。

ふざけんじゃないわよ。

酔い潰れた美女を置いて、どこに行くつもり?」




完全に目が据わっている。


俺は無視を決め込むことにした。


触らぬ神に祟りなし。



――しかし、その考えは甘かった。



「さいってー!!

さんざんあたしの体を弄んでおいて、こんなところに捨てるのね!?」



女の叫び声が、深夜の駅ホームに響き渡ったのである。


……とんでもねえ女だ。



俺と同じ電車から降りてきた数人の視線が、一斉に刺さる。


あまりの居心地の悪さに、俺は千鳥足の女を引きずって場所を移さざるを得なくなってしまったのだった。




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