俺は今、見知らぬ女に壁ドンされている
「………あんた、名前なんてーの?」



俺は胸の高鳴りを必死で無視しつつ、女の耳許に囁きかけた。


女はすっきりとした声で、



「蘭」



と答えた。



「ふうん、蘭ね。俺は」


「豪くん、でしょ?」


「……俺、そんなことまで喋ったのか…」



俺は照れくささを隠すように、抱きしめる腕に力を込めた。


蘭は黙って俺の胸に額を押しつける。



「……寒いな。

とりあえず、どっか暖かいとこ入ろう」



「ぷっ、なにそれ、誘ってんの?」



「野暮なこと言うなよ」



「あははっ、オヤジか!」



俺たちはくすくす笑い合いながら、夜の公園を出た。




ーーえ?

その後、俺と蘭がどうなったかって?


あんたも野暮だねぇ……。



それは、ご想像にお任せしますよ……。




*豪サイドfin.



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