俺は今、見知らぬ女に壁ドンされている
「さっき電車の中でくっちゃべってたじゃない。

志織ちゃんに振られちゃって、でも幸運にも絶世の美女に一目惚れされて、愛の告白されて、幸福な家庭を築くんでしょ?」



あたしがにやりと笑って言うと、男の顔が、ぼっと火を噴いた。



「このあたしに一目惚れされよーだなんてねえ、百年早いのよっ!」



「誰がお前みたいなガサツ泥酔ゲロ女!

こっちから願い下げだっつーの!」



男は真っ赤な顔で水をかけてくる。


あたしは「やったなイマイチ男!」と叫んで、水をかけ返した。



「イマイチとはなんだ、失礼な!」

「自分で言ったんじゃないの!」

「他人から言われたら腹立つんだよ!」



それからは、雪合戦ならぬ水合戦。


二人とも全身びしょびしょになるまで、水を無駄遣いし続けた。


酔っ払いって、ほんと手に負えないな………。




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