俺は今、見知らぬ女に壁ドンされている
熱に浮かされたように潤んだ瞳が、俺を囚えて離さない。



どくん、と胸が鳴った。


ごくん、と喉も鳴った。



……この美女はきっと、俺に一目惚れをしたに違いない。



真夜中。

がらがらの終電。


気怠げに背もたれに身を預け、どこか憂いのある表情を浮かべた男。



うん、なかなかドラマチックじゃないか。



美女はきっと、こう見えて母性本能の強いタイプで、寂しげな雰囲気をまとった俺に心を奪われたのだ。


きっと外見だけじゃなく心もきれいで、家庭的で料理上手で、男を優しく包み込んでくれるような最高の女性なのだ。



こんな女に惚れられるなんて、俺の人生も、捨てたもんじゃない。




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