潰れたリップクリーム。




「南、もしかしてコンビニ?」


廊下を歩いていると、隣のクラスの長谷部が上半身を廊下に出して話し掛けて来た。


「そうだよ〜」


「ナイスっ!ついでにピザまん買って来て!」


「しょうがないなぁ…130円ね」


高校生に130円でも奢るという言葉は知りません。


「はいよ!」

長谷部は笑って150円渡して来た。


「20円はお駄賃な」


「……500円が良かった」


「我儘言うな、早く買って来い」


「はいはい…」


財布と150円を握り締めてコンビニへと向かう。


「よいしょ、っと」


門から堂々と出る度胸はないから裏のフェンスからこそっと抜け出すと後は簡単、徒歩1分で目的地のコンビニ到着だ。


「長谷部ご希望のピザまんあるかな」


息を吐くと白い息が空に舞う。

マフラーもコートもせずに出て来たから寒い。

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