仕返し【壁ドン企画短編小説】
「く、すっ」
久住君、そう発しようとした私の声を掻き消す様に彼は唇を奪った。
「……っ、」
何度も何度も角度を変えては、啄ばむ様にキスをする。
やっと、解放された時にはもう、何も考えられないでいた。
はあっと一度、大きく息を吸い込む。
すると、久住君の声が降って来た。
「先輩、俺の事男として意識してなかったでしょ?」
真面目な顔でそう言う。
「彼氏と別れて、不謹慎だけどすっげえ嬉しかったのに。
それに、今日誘われて期待もしました。
なのに、先輩はずっと元彼の話ばかり。
……俺なら、絶対浮気なんかしない」
潤んだ瞳で、彼は私を見つめた。
「だから、これからは意識して下さいよ?」
掴んだ手にぎゅうっと力を込めると、彼はニヤリと笑った。
……酔いなんて一気に醒めた気がする。