私、立候補します!
(死なせたくない……っ。一体どうすればいい……!)
サセット国での治療は癒術と癒術薬を使って行われ、怪我または病気の状態や治療を受ける人物との相性で完治出来るか否かの違いがある。
ライズ国などの他国には癒術薬は全ての病や怪我に効くと誤解されがちだが、必ず治るという代物ではなかった。
何か方法はないのか。
アレクセイをベッドに運ぶチェインの背中を見ながらラディアントは頭を必死に働かせる。
そしてチェインから城の留守を頼んでいる従兄弟のエドワードを思い出し、一つの希望にたどり着いた。
(エドワードの母方の縁者にライズ国とハーフの人がいたはず。確か彼は以前ライズ国で医術を学んでいたとエドワードが言っていた……!)
そうとなれば一刻も早くエドワードに連絡をとらなければ。
ラディアントは傷口を圧迫している手に力を入れながら、ベッドから戻ってきたチェインに早急にエドワードへ連絡をとってくれと頼んだのだった。
***
――連絡術を用いてエドワードに状況を説明すると彼の対応は速やかだった。
連絡を受けたエドワードはすぐにその人物に連絡をとって事情を説明したところ、向こうは快諾して十分ほどでニールの城へと到着。
――エドワードに連絡を入れている間にアレクセイを心配したウィリアムが部屋に来たため、領主であるニールに緊急の領地をまたいだ移動術をさせてほしいと伝言を頼み、数分で許可が出た――。
空き部屋にエレナを運び、彼が到着次第手術が始められる。
術者以外は退出を願い出され、ラディアント達は廊下でじっとひたすらに待つ。
ラディアント、チェイン、そしてまだ全快ではないニールもエレナを案じて共にいる。
ウィリアムはアレクセイのそばについているが、終わったら教えて下さいとチェインに頼んでいた。
祈るように両手を合わせて額にあてるラディアントの姿を横で見ているチェインとニール。
同時にラディアントに違和感を感じて二人は視線を交わし合う。
今日は日没時に月は隠れていたし、ほんの少し前までは確かにラディアントは女性の姿だった。
しかし今のラディアントは男性の姿になっている。
首を傾げながらもさすがに今の状況でラディアントに告げることははばかられるチェイン。チェインの不思議そうな様子を見ながら、ニールだけは柔らかい笑みを微かに浮かべていく。