私、立候補します!
(エレナさん、必ず目を覚まして下さいね。このままいなくなってしまったら、あなたは大変罪な女性になりますよ――)
胸の中でエレナへと言葉をかけたニールは笑みを消し、真っ直ぐな眼差しを部屋の扉へと注ぎ続けた。
***
――手術は無事に終わり後はエレナ次第。
医者であるクリス·サンダースは部屋に呼んだラディアント達にそう言って眠るエレナの頭を優しくなでた。
「出血量が多く、持っていた輸血用の血液を彼女に合うように性質変化させて使用しました。幸いなことにその場で拒絶反応が出ませんでしたので今後も拒絶反応が出なければいいのですが……。癒術や癒術薬が効かないとお聞きしましたので何とも言えません」
夜明けまでに拒絶反応が出なければひとまず安心でしょう、とクリスは穏やかな口調で皆に告げて使用した器具を片づけていく。
ラディアント達は揃ってほっと息を吐き出し体の力が抜けていった。
(とりあえずよかった。まだ安心は出来ないが彼は腕がいいとエドワードは言っていた。それなら私は彼を信じよう)
「サンダースさん。急なうえに夜間にも関わらず来ていただいて本当にありがとうございます」
「とんでもございません。私なんぞがラディアント様方のお役に立てたのでしたら、光栄なことにございます」
ラディアントはクリスを隣の部屋へと案内するニールとウィリアム、兵士に頼んだ使用人達の様子の確認報告を聞いてくるというチェインを見送り、夜が明けるまでエレナのそばを離れなかった。
***
三日後、ニールの執務室にてニールとチェインが向かい合ってソファーに座っていた。
二人は顔を見合って同時に息を吐き出し、現在同じ部屋にいないラディアントを案じている。
クリスの治療を受けたエレナは無事に夜明けを迎え、容体は安定したとクリスから言葉をもらったものの今もまだ目を覚ましていない。
穏やかな呼吸に確かに感じる体温。エレナは眠ったままの状態を続けている。
「何度もこのような時こそしっかりお休みになるようにと声をかけているのですが、首を縦に振って下さらないのです」
「私も同じですよ。エレナさんが目を覚ますまでそばを離れたくないとそればかりで……」
朝から晩まで、ほぼ一日中と言ってもいいほどにラディアントはエレナのそばを離れない。
ニールが言おうともチェインが言おうとも彼はけして頷いてくれず二人は困っていた。