私、立候補します!
体調の心配に加えて仕事が城で領主が帰るのを待っており、滞在期間を延ばせば延ばすほど仕事は溜まっていく。
本日の早い時間、目覚めるか急変したらすぐに連絡を、と伝言を残して他の患者を診察するために一旦城を去っていったクリスから少なくとも目が覚めるまでは安静にと言われていることもあり、エレナを移動させることは出来ない。
元気をとり戻したアレクセイがエレナとラディアントの二人を心配し、頻繁に部屋の前をうろうろと歩いていた。
チェインはラディアントの力ない姿を思い浮かべて目を伏せ、未だ男性の姿を保っていることを思い出す。
「そういえばラディアント様はずっと男性の姿のままですよね。閣下は何かご存知ですか?」
ご本人は気づいているのか分かりませんけど、と続けてチェインが言うとニールはくすりと笑った。
「ラディアント様がエレナさんを恋愛対象として本気で思い始めたということですよ」
「それで呪いが解けたと……?」
「いいえ。完全には解けていないはずです。以前、国王様から呪いについてお聞きした話しですので情報は確かだと思いますが」
おそらく今後は不定期に男女の姿が入れ替わると思います、と言ったニールにチェインは腕を組んで大げさに考えるような仕草を見せる。
今回の事件でエレナが危うく命を落とすところだったことから、チェインはエドワードからライズ国の家族のもとへ帰すべきではと連絡術で言われていた。
正直チェインもその案は視野に入れていてラディアントに相談を考えていたのだが、ラディアントがあまりにも憔悴している様子から言い出すのをためらっていたところに今のニールの言葉。
事態は複雑になったとチェインは眉を寄せてうなる。
ニールはそんな様子をちらりと見て、お悩みのようですね、とぽつりと声をかける。
「悩みもしますよ。エレナさんを家族のもとへ帰したほうがいいのではと考えていましたが、ラディアント様が本気になられたとしたら帰ってもらっては困りますから」
「……そうですね。ワタシとしてはラディアント様のところにいてほしいと思いますが、ラディアント様はどうお考えなのか。エレナさんの気持ちも分かりませんし……」
「まずはエレナさんに早く目覚めてもらいたいですね」