私、立候補します!
考えにつまってすることに困ったエレナは失礼だと思いつつも再びラディアントの寝顔を眺めようと顔を動かす。
するとラディアントの後ろの方にある扉が丁度開かれ、中に入ってきたチェインとしっかり目が合って。
「エレナさんの目が覚めた……!」
彼の大声が響きわたっていく――――。
――チェインの叫びをきっかけに活気が生まれていった。
ラディアントがチェインの声に驚いて目を覚まし、エレナが目を覚ましていることにこれでもかと目を見開いて言葉にならない声をあげ。
そして間もなくばたばたと音をたてて部屋に駆けつけたアレクセイはエレナを見るなりチェインの横を走り抜けてベッドに飛び乗り、後を追いかけてきたニールに怒号を浴びせられて父のあまりの剣幕に泣き出す。
あまりの賑やかさにエレナは怪我の痛みを感じながらも思わず笑ってしまった。
***
騒動がようやく落ち着いた頃、様子を見に翌日――エレナが傷を負ってから四日後の午前中のこと――再訪したクリスによって診察が始まる。
治療時と同じようにラディアント達は部屋の外で待ち、そのわずかの時間さえ彼らは待ち遠しい。
中でもラディアントはアレクセイと同じかそれ以上にそわそわといった様子で待っていて、その姿にチェインは後ろで忍び笑いをもらす。
もちろんチェインも待ち遠しいことに変わりはないが、今までのラディアントとのギャップに反応せずにはいられなかった。
(こんなラディアント様は見たことがない。エレナさんが来てから今まで以上にラディアント様を好きになりそうだよ)
エレナと接して一喜一憂するラディアントがチェインの目にはずっと人間らしく見え、今まで以上に彼を好ましく思う。
叶うならこれからもそんなラディアントを見たいと願った。
それほど時間が経たないうちに入室許可が下り、ラディアント達が再び部屋に入っていくとエレナはすでにベッドに腰をかけて座るほどに回復していた。
あまりの回復ぶりを疑問に思ったニールがクリスに問えば、彼は眉を下げて戸惑ったような顔をして口を開く。
「それが、念のために私の癒術も試させていただいたところ、信じられないことに効果がありまして――」
「本当ですか? 私やチェインの癒術ははじかれてしまって使えなかったのですが……」