私、立候補します!
***
ラディアントの城へと帰ってきた翌日の午前中、侍女のガーネットからラディアントが執務室で呼んでいるという伝言を聞いたエレナはすぐに向かった。
エレナ達が戻ってきて間もなく空は泣き始め、今日は強い雨が廊下の窓を叩いている。
執務室の扉をノックして許可をもらい入室すると、入り口の横には今日は初めて会うエドワードが立っておりエレナは挨拶を交わした。
ラディアントは執務机に着いて書類をさばいていた手を止め、エレナをソファーに促すと共に自らも執務机を離れてエレナの隣のソファーに腰を下ろしていく。
「帰ってきた翌日早々に呼び出してすまなかったね」
「いえ。昨日ゆっくり休ませていただいたので大丈夫です」
昨日ラディアントと途中で別れたエレナはその後ガーネットにかいがいしく世話をされ、夜はぐっすりと眠ることが出来た。
そのため体調もすこぶる好調といえる。
ラディアントはそれならよかった、と顔をほころばせて言葉を止める。
次いで会話が途切れたことに目を瞬かせるエレナを真剣な眼差しで見つめた。
「エレナさん、今回は私を庇ってくれて本当にありがとう。改めてお礼を言わせてもらうよ」
「私こそ治療費を負担していただいたり、ラディアント様がついていて下さったりとありがとうございました」
「エレナさんがいなかったら私やチェイン、アレクセイ達もどうなっていたか……。正直に言うと今回のことは今後のサセット国に関わる重大なことになったんだ」
「とても深刻な問題なのですね……」
エレナもただ事ではないと思っていたが、それほどまでに重大なことに発展するとは思わず、さぁっと体の熱が引いていき肩が震える。
ラディアントは震える小さな体に気づき、そっとエレナの肩に触れて熱を伝えるように数回なでていった。
「怖がらせたい訳ではないけれど、エレナさんを巻きこんでしまったから伝えておきたかったんだ」
「お気遣いありがとうございます……」
ラディアントの言葉と温もりが相まって熱を取り戻すエレナは自分に何か手伝えることはないかと考える。
氷の剣に破壊されたロッドはラディアントの魔術によって綺麗に直してもらったが、エレナは今の自分の力量では役に立てないと思っていた。
今後訓練を重ねようと決めたものの、急速に腕があがるはずもなく、エレナは他に何が出来るのかを考えていたのだった。