私、立候補します!
(私に出来ることなんてあまりないけど、それでも何かをお返ししないと)
「うーん……。気持ちは嬉しいけど今は思いつかないからそのうち言うことにするよ」
「分かりました。思いついたらすぐに言って下さい!」
やる気を目に宿らせるエレナに彼女はうんと頷き、座った時と同じように静かに立ち上がる。
時間がそれほど経たないうちに椅子を元々置いていた場所に戻す様子にエレナは忙しいのかなと首を傾げた。
「この後、王太子の募集に集まってくれた女性全員が食堂に集まって夕食をとることになっているけれど、エレナさんは参加出来そう?」
体が辛いならここで食事をとることも出来ると言われ、エレナはぶんぶんと首を横に振る。
癒術薬をもらうかわりに募集に立候補してサセット国へ来たのだから、初めから集まりに欠席では印象が悪い。
(体の具合も悪くないし大丈夫。頑張るからには最初から印象をよくしておかないとね!)
「参加しますのでよろしくお願いします」
エレナは笑顔でそう返した。
***
支度を整えて女性に案内された食堂はエレナの想像をゆうにこえていて、その広さにぽかんと開いてしまった口を慌てて閉める。
「ここが食堂。空いている席に座って楽にして待っていてね」
どうぞと扉を開けて中に入れてくれた女性は、自分はまた後でと中に入ることなく扉を閉めてしまった。
エレナは軍人だし忙しいんだろうなと思う。
短時間ながら話しているうちに姉のような存在に感じた彼女との別れを少々惜しみながらも、くるりと向きを変えて食堂の中をうかがった。
広い室内はとても明るく、エレナが休んでいた部屋のように白を基調とした壁と椅子に目が向く。
テーブルは脚が透明な輝きを放ちガラス製と思われる。
(うわぁ、テーブルも椅子もすごい高級そう……。汚したりしないように気をつけないと)
見当違いとも言える感想を持ちつつ、エレナは入り口近くの空いていた席に着く。
すとんと腰をおろすと座り心地がよく、初めて座る椅子なのに窮屈ではなかった。