私、立候補します!

***


 ぶっ通しで続く天気にエレナは覚悟を決め、謝罪しようとラディアントの執務室を訪ねた。
 会えたら頭を床につける勢いで謝ろう。そう決意して扉を叩くと、扉を開けて顔を見せたのはエドワードである。

「どうしました?」

 切れ長の目をわずかに常より開いた後、エレナの姿に瞬きを繰り返す。
 ラディアント様は、と問えばあなたのお部屋に向かわれましたが、と淡々と返され面食らった。

(うわ、入れ違い? 最悪処罰される覚悟で来たのに……!)

 エレナの気持ちは見事に空回りに終わり、がっくりと肩が下がってしまう。
 しょんぼりと落ちこむ小柄な姿を黙って見ていたエドワードは一つのことを思いついた。

(部屋にいないとなればラディアント様はここに戻ってくるかもしれない。また入れ違いにならないように足止めをしたほうがいいだろう)

 聞いてみたいことは色々とあるし、チェインは私用で街に出かけているから静かに話しをするのに丁度いい。
 そう心の中で呟いたエドワードはエレナを執務室へと招き入れた。


***


「エドワードさんはチェインさんと従兄弟なんですね」

 エレナをソファーへと座らせたエドワードは自分も向かいのソファーに座って質問をあげていった。
 ラディアントとエレナが親しくなるきっかけを探ろうという理由からだったが、いくつか質問をした後のエレナの印象は貴族の令嬢としては変わっている、その一言だった。

(体を動かすのが好きで普段は領地に住む子供達の面倒を見ている、か……。一般国民と変わらないというだけで他には何かないのか?)

 面識が少ないのに深入りはまずいだろうと判断した彼はお返しにと自分の身の上話を始めた。
 すると予想外にもエレナはチェインとの関係に食いついてきたのである。

「驚きました。一度しか見ていませんがあまり似ていらっしゃいませんね」

「父親同士は似ていますが、俺もチェインも父親以外に似たようですから」

「そうですか……。私は母に似ています――」

 しばらく天候を気にしていたエレナは母のことを口にして元気になっただろうかと強く思ってしまう。
 時々気になっていたがこちらに来てもうだいぶ経ち、今頃は癒術薬を服用して元気になっているのだろうと思い浮かべた。

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