私、立候補します!

 好待遇にしすぎた影響か、最初と態度があまりに変わりすぎてつけていた侍女どころかエドワード達とも言い争いを起こして去って行った女性もいる。
 出来ればこの方法はもうとりたくないが、年々増えるまわりの様々な声にそうも言っていられなくなった。

「多少彼女が無理なことを言っても叶えようと思ってるんだ」

 笑みを消して目に真剣さを宿らせるチェインをちらりと見たエドワードは書類に視線を戻す。
 そして、先ほどまで話していた彼女の様子を思い出しながら言葉を返した。

「彼女は変わっている」

「え……?」

「体を動かすのが好きで、領民の子供達と遊ぶのが日課の一つらしい」

 書類の仕分けを続けながらふっと息をもらす。

「彼女はきっと大丈夫だ」

 顔を上げれば従兄弟が目を丸くしているのが見え、珍しい表情に自分ではっきりと口角が上がるのを感じた。

「俺はそう思っている」

 ――エドワードもまた、チェインから見て珍しいほどの笑みを浮かべた――。

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