私、立候補します!
「それでも私が来てから悪い天気が続いていたので謝罪したいと思っていたんです」
「それでラディアント様と入れ違いになったわけか……」
「はい。こんなことになってしまってすみません……。チェインさんにもラディアント様にもご迷惑をおかけして――」
「ちょっと待って。エレナさんが謝る必要なんてないんだよ? 僕があんなことをしなければエレナさんもラディアント様も不快な思いをしなかったんだから」
僕こそごめんね、と謝る彼にエレナはとんでもないと首を横に振る。
私こそ。いやいや僕こそ。終わりの見えない謝罪合戦がしばらく続いた後、それじゃあお互い様ということで、と二人の間の話はつけた。
しかし、エレナがまだここにいたいという話について聞いてないと思い、今度はそちらの話を聞いてみることに。
食事を終えて食器をカートに片づけてチェインは切り出した。
「エレナさんはまだここにいたいと言ってくれたけど、それは本当?」
「はい。やっぱりまずいでしょうか……?」
(こんな騒ぎを起こしたら普通はすぐに追い出されるよね?)
食堂でラディアントと初対面した際に、ラディアントが女性であることに不満のある者はその場で帰るように言われたくらいだ。
やっぱり何か処罰が、と恐々とチェインの様子をうかがうエレナを見てチェインは目をふせて笑う。
「――ううん。むしろその逆かな。怖い目にあってもいたいと言ってくれた人なんてほとんどいなかったから」
チェインの頭の中に今までのことが次々と浮かんでは消えていく。
チェイン達も出来るだけのフォローはした。それでも魔術を全く見せないことは不可能だし、不測の出来事もある。
中には魔術を使っている明かりでさえ怯えてしまう女性もいた。
その点エレナは生活に関わる物は大丈夫だったようで安心していた中での出来事。
チェインは二人を仲良くするきっかけ作りのつもりで起こした自らの行動を悔いるが、エレナの返事が予想とは違うものであることに期待せざるをえなかった。