私、立候補します!
ラディアントは自身で誰かが側にいる時は寝つきが悪く、眠りが浅く、寝起きがいいと思っていたし、今までは体調が悪い時でさえそうだった。
例外中の例外にラディアントは困惑して前髪をくしゃりとかきあげる。
(これから彼女とどう接していけばいいのだろうか)
エレナは帰らずに未だここにいる。
その事実にラディアントは戸惑い頭を悩ませた。
***
「チェイン……。お前はさらにこじらせるつもりなのか」
思い悩む主を心配して侍女に何か疲れのとれそうな甘い物を頼んで執務室に戻る途中、エドワードは問題を起こして間もないにも関わらず常と変わらない笑顔でこちらに向かって廊下を歩いて来るチェインを見つけた。
思わずいつもより低い声で呼び止めても相手の笑みは消えない。
「誤解だよ。今度こそはきっと上手くいくからさ」
「その根拠のない自信はどこから来るんだ」
睨みをきかせてみるがチェインには全く効果がなく、エドワードははぁと息を吐いて視線をそらす。
すると、チェインの腕の中に抱えるようにして持たれている数冊の書物が視界に入り、その中で見慣れた一冊を抜きとった。
「今更お前が魔術入門書を読んでどうするつもりだ。あまり得意ではない俺でもあるまいし、お前はこんなものは幼少時に身につけているだろう」
エドワードとチェインは魔術に関しても違いがはっきりしている。
エドワードの魔力はそれほど多くない。そのため、基本的な魔力の使用量の少ない魔術は扱えるものの、多くの魔力を必要とする魔術は扱えず、それを補うように武術に長けている。
反対にチェインは魔術に長け、王族に続く者として名を知られているが、武術に関してはどれだけ訓練をこなしても並かその少し上程度。
二人は互いの欠点を補える仲間であり、戦いにおいて言葉を多く交わさずとも分かり合える頼もしい間柄だ。
しかし、普段はタイプが違い過ぎるために度々エドワードの頭痛の種になっている。