私、立候補します!
「これはどんな魔術がこめられているんですか?」
エレナは聞きながら胸がドキドキと高鳴っていることを感じている。
チェインの力があってこそだが、自分が魔術を使える日が来るなんて夢のようで次はどんな魔術だろうと期待は膨らんでいく。
「それは発動してからのお楽しみだよ。さあブレスレットに三回触れてみて? きっとエレナさんも気に入ってくれるはずだから」
「はい!」
にこにこと満面の笑みで促すチェインに頷いたエレナは、傷つけないようにエメラルドの石が連なるブレスレットを優しく三回なでた。
――すると急に足元が不安定になり慌てて下を見て目を見開く。
(浮いてる……!)
ふわふわとエレナの足先が訓練場の床から浮いていた。
ゆっくりと、しかし確かに体は高度をあげて浮いていき、床よりも天井が近いほどの高さまで浮き上がる。
「エレナさん気分はどう?」
「とても楽しいです! 空中に浮いているなんて夢みたいです」
(本当に楽しい!)
ふわりふわりと浮きながら体の向きを変えると、手を振ってくれているチェインと壁の近くに目を見開いてこちらを見ているエドワードの姿がある。
「エドワードさ――」
自分は平気だと手を振ろうと腕を上げた瞬間、体が急に重力を感じ始めて視界が激しく揺れる。
(落ちる……!)
「エレナさん!」
一瞬恐怖を感じたエレナ。
しかし、下の方でエレナの名前を呼んで腕を広げているチェインの姿を見て体の力が少しだけ抜けていく。
「必ず受け止めるから」
チェインは笑みを消して彼女を受け止めるべく真っ直ぐな視線で身構える。
――そして落ちてきたエレナをしっかりと受け止めた。
***
「エレナさん!」
どさりとチェインの腕の中にエレナがおさまったのを見てエドワードの意識が戻ってくる。
エドワードを見て腕をあげかけた瞬間急に彼女が浮力を失い、小さな体が床に叩きつけられる光景を想像して足が竦んだ。