私、立候補します!
(とっさに動けないとは俺もまだまだだな。チェインがいたらからよかったが――。……そもそもこうなったのはチェインが原因では――?)
はたと原因に思い当たれば、安堵感から怒りへと感情が切り替わり、エドワードは足音荒くチェインに詰め寄った。
「チェイン! お前という男は懲りないのか……!」
従兄弟への怒りに支配された彼は珍しく他人の前ということも忘れてまくし立てていく。
「いつもいつも思いつくままに行動して! まわりの人間がどれだけ迷惑なのかを考えたことはあるのか……!」
「そんなに大声出さないでよ。エレナさんが驚いてるじゃないか」
「あの、私は――」
「話をそらすな!」
止めようと声を出すエレナだったが、エドワードに大声で遮られてチェインと一緒に肩をびくりと揺らしてしまう。
(どうしよう。エドワードさんすごく怒ってる……!)
依代式という方法をチェインから聞き、自分も魔術をやってみたいと言ったばかりに言い争いになってしまうなんて。
「すみません! 私が悪いんです。私がお願いしたから――」
「エレナさん、君は何も悪くないよ。――エドワード、君は話を聞いたらどうなんだい? いくらなんでも僕だって予測してたよ。だから広い真ん中で発動したし、僕が真下にいたんじゃないか」
昨日の反省も多少はあるが、それがなくとも訓練場で魔術の発動練習をする際の注意はチェイン自身心得ているつもりだ。
エドワードはチェインのなだめるような眼差しに頭が冷えていくのを感じる。
「悪かった。エレナさんも取り乱してすみませんでした」
「いえ……」
「そうだ! エレナさん、魔術を使ってみてどうだった?」
話題転換とばかりにチェインが明るい声でエレナに聞いてくる。
エレナは風を起こした時と空中に浮いた時のことを思い出して胸がわくわくとはずむのを感じて笑みを浮かべた。
「急に落ちたのには驚きましたが楽しかったです!」
「本当に?」