私、立候補します!
「はい! 風が起きたり空中に浮いたり、夢を見ているみたいでした。体験させていただいてありがとうございます」
「どういたしまして。予測してたとはいえごめんね? 浮遊術はラディアント様の依代式だったからさすがに魔力は少ししかお願い出来なかったんだ」
「え……っ!」
「な……っ!」
何てことのないように軽いトーンで暴露するチェインにエレナとエドワードのつまる声が重なる。
チェインはエレナの腕に通していたブレスレットを外し、軍服の上着のポケットからハンカチを取り出して丁寧に包んでポケットに入れた。
「部下になって間もない新人に試したいって言ってお願いしたんだ。ラディアント様の依代式が合う人も今まで王族の方しかいなかったから念のためにね」
「そうしたらエレナさんに合ったわけか……」
「僕のが合ったからもしかしたらと思ってね。そしたら大当たり」
すごい偶然だよね、と目を細めるチェインにエドワードはそれが目的だったのかと考える。
エレナに魔術を体験させたいというのも理由だろうが、ラディアントの依代式を試すことに重点を置いていたのだろうと。
彼女は魔術が使えたことを大変喜んでいるから、その点に関しては大丈夫だろう。
(しかしラディアント様はどうなるか……)
彼女をあと一歩で殺めそうになったことを大変悔やんでいるし、その後も彼女が滞在を続けると知ってどう接したらいいのかと悩んでいる。
(昨夜のことがなければラディアント様も喜ばれただろうに……)
しかし、依代式魔術に触れさせたのもチェインであり、彼を責めづらくなったと内心でこぼす。
とりあえずこの後急いでラディアントのもとへ戻り、遅れているだろう職務を手伝おうとエドワードは思った。