私、立候補します!
11 再会は強制的に

 依代式魔術を体験してから数日後、エレナへと届け物があった。
 朝食後に窓際にある椅子に座って外をぼんやりと眺めていると、カートを片付けて戻って来たガーネットは片手に小さな箱を持っている。

「エレナ様。エレナ様にお届け物です」

「私に、ですか……?」

「はい! 送り主はカインド様です!」

「え……?」

(カインド様ってカインド·サセット国王様……!)

 ラディアントの父でありサセット国の王。
 ラディアントの緑色の目は国王似であるとガーネットから聞いているが、直接会ったことのないエレナには姿はぴんとこない。

(何で王族や上級貴族でもない私に……? もしかして早く国に帰りなさいっていう手紙でも入ってるんじゃ……)

 ガーネットから小包を受けとってテーブルに置いたエレナは包装紙を丁寧に開き、中の箱を開ける。
 すると小さな箱の中には手紙と金と緑の色合いが綺麗なバングルが一つ入っていて、エレナは手紙を手にとって開いた。

(えっ、国王様直筆の手紙なんて読むのが怖い……!)

 恐々と文面に目をはしらせると、そこにはエレナの予想とは全く違うエレナが滞在していることへの感謝の内容の手紙だった。

(手紙をいただけるだけでも恐れ多いのにプレゼントなんて……)

 一緒に入っていたバングルは父である国王からの感謝の気持ちだと書かれていて、これからも息子をよろしく頼むという言葉でしめられていた。

(私がお世話になっているし、ほとんど会ってないから話もしていないんだよね……)

 あの夜の出来事以降も会うことはなく、癒術薬のお礼を何も返せずこのままただ居続けるくらいならライズ国に帰った方がいいのではないかと頭に浮かんでは消えていく。

(なんなら家事が得意なことを言って女中さんの仕事でもさせてもらおうかな。そうしたら少しくらいは役に立つよね。……まずは国王様に手紙を返すべきなのかな……?)

 ガーネットに聞いてみようと思いながらバングルを箱から取り出してみる。
 半透明なバングルは光のあたり具合できらきらと輝いてとても綺麗だ。

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