私、立候補します!
「エレナ様にきっと似合いますよ」
つけてみて下さい、と眩しい笑顔で促されたエレナは頷いて左腕に通した。
すると――。
「え……っ!」
バングルは手首にぴったりとしたサイズに縮まり、急に光を放ち始めたことに驚いたエレナは外そうとバングルをつかむ。
しかしバングルはぴっちりと吸いつくようにエレナの手首にくっついて動かない。
(びくともしないしどうしよう!)
困り果ててガーネットと顔を見合わせてしまうと、急にばたばたと部屋の近くが慌ただしい音をたてた。
そして足音が近づいたかと思っているとどんどんとエレナ達がいる部屋の扉が叩かれる。
「エレナさんはいるかい? すまないけど失礼するよ――」
入室の許可を出す間もなく扉が開かれ、慌てた様子のラディアントが入ってきたことにエレナは驚いた。
(今まで会ってなかったラディアント様が部屋に来るなんて何かあったのかな?)
首を傾げているとラディアントはエレナの腕にはめられて未だ光を放つバングルを見つけて目を見開いた。
「まずい……っ。エレナさん、そのバングルを早く外すんだ!」
「えっ、それが外れないんです!」
「そんな……っ」
ラディアントは駆け寄ってバングルを外そうとするが、バングルは光を強める一方で外れそうにない。
ラディアントは己の魔力を注ぐことでバングルの破壊を試みるもはじかれてしまった。
(干渉防止が含まれている。手のこんだことをして父上は何がしたいんだ?)
少し前に父から手紙が届き、王太子妃候補に素敵なプレゼントを送ったという文面を見て急いで訪ねたのだが間に合わなかった。
バングルは光を強め続けるが何も起きず、ラディアントにはかえってそれが恐ろしく感じる。
(光って魔力を感じるのに何も起きないはずがない。しかしどうすればいい――?)
考えこんでいるとふと左手を握られた感触を覚えてそちらに目をやると誰かに手を握られている。
目の前にいる相手はもちろんエレナしかいない。