私、立候補します!
「国王様も思い切ったことをしますね。しかも解除条件を教えて下さらないとは」
「ラディアント様、何も手がかりはないのでしょうか?」
長期間このままでは色々と支障を来します、とソファーの横に立って眉を下げて心配げな表情を浮かべるエドワードにラディアントはゆるく首を横に振る。
「残念ながら手がかりはないんだよ。私とエレナさん両方に送られた手紙にはそれらしきことは書かれていなくてね」
ラディアントとしては利き手が自由なことは唯一の救いであるが、逆にエレナは利き手を握ってしまっている。
これでは食事などで不便な思いをしてしまう。
(今は午前中だからまず目先の問題は昼食か。しかし、トイレや入浴、着替えなど問題は山ほどある。それに、父上の行動がまるで私を近くで見ているようだ……)
エレナへの接し方を考えている中でのこの事件。ラディアントはそう思わずにいられない。
そしてもう一つ、エレナが依代式の魔術を発動出来ることに驚いた。
(バングルを手首に通して間もなく光ったということは、父上は身につけることを発動条件にしたのだろうけど……)
王族の依代式は王族の血をひく人以外で扱える存在はきわめて少ない。
(そういえば今まで他国の王太子妃候補者に試したことなんて一度もなかった――)
依代式を試すどころか魔術を直接見せたこともほとんどない。
ラディアントは繋がれた手を見ているエレナを見つめた。
***
(つ、疲れた……っ)
誰かと手を繋いだままの生活は想像以上にエレナに疲労をもたらした。
昼食と夕食は面白がったチェインが子供に接するように食べさせてきて、ご飯を食べられたことはよかったけれど、終始はいあーん、と言われて口を開けて受け入れたのは恥ずかしく。
入浴や着替えはお互い目隠しをして侍女に頼み――服は生地を切らざるをえなくなり、着脱した後に修復術で直してもらった――トイレは目隠しに加えて耳をふさいでやり過ごした。
現在は何とか夜を迎え、使っていない客室の数人がけの大きなソファーに座っている。